ここから本文です。
出雲の伝統工芸紹介「出雲獅子頭」
出雲市には、豊かな自然と歴史に育まれた多くの優れた伝統工芸があります。 作り手の方の想いとともに、出雲の工芸を紹介します。 |
---|
出雲地方伝統の獅子頭をはじめ、地域で受け継がれる神楽の面や神棚、箱、看板や仏像など幅広い木工品を
制作される中尾芳山さんをたずねました。
玄関で出迎えてくれる中尾さんの迫力ある作品の数々
■脱サラから伝統工芸の道へ
サラリーマン時代に趣味で絵を習っていたところ、神楽面の修理を頼まれ評判となったことから、独学で木工品の制作を手掛けることに。
会社を退社してからは、高等技術校で箱制作を教えておられました。
出雲地方は神楽が盛んなので、独学で神楽面の作り方を研究し、色々な神楽面を作っておられます。
中尾さんが得意とするのは抹茶茶碗などの焼物を入れるための木箱や、神棚。
誰に習ったというわけでもなく、見よう見まねでできるようになったそうです。神棚は、新しい家ができるときに大工さんから注文が入ります。
■獅子づくりの楽しさ
なんでも作ることができる中尾さんに「何を作るのが一番楽しいですか?」とたずねると、「そりゃあ獅子がいちばん。」と答えられました。
獅子も色々なサイズがあり、小さいものは新築祝い、古希の祝いなどの祝い事で買われることが多いそうです。小さいものは手間がかかり、制作に2週間程度必要です。また、手仕事なので大量には作れません。
大きい獅子頭、宮獅子は、制作に2ヶ月くらいかかります。でき上がった時は、やはりいつも嬉しいそうです。
■同じものを2つ作る
注文を受けた獅子頭は必ず2つ作るのだそうです。
2つ作り、お客さんに好きな方を選んでもらい、もう1つは、中尾さんの手元に取っておいて、数年後修理を依頼された時などに見比べるそうです。1つの作品に対して、実は2つ分の労力がかかっています。
■絶えない注文
「宣伝なんかしてないよ。人づてに注文がくるんだわ。」と話す中尾さん。
現在は獅子頭や神楽面の制作をされる方も少なくなり、市外からの注文も多いそうです。
正確で丁寧に作られているため、祭りなどで中尾さんの獅子が使われると評判が良く、新聞などにも取り上げられるなど、年をとってより忙しくなったと話されました。「いいものを作ると信用ができる、信用は大切で、それが評判につながる」
■作れないものはない
中尾さんのもとには、様々な制作依頼があります。
店舗や旅館、宮などの看板をはじめとし、木造家屋の妻飾りやタンス、仏壇、消防団の纏(まとい)も作られたそうです。
そんな中でも、「歴史があるものを修理することはまたやりがいを感じる」と、難易度が高いものに挑戦する喜びも感じておられました。
作られた作品の数々を見せていただきました。
■生涯現役宣言
「動けーまでやりたいわね。100歳になっても、そりゃーできるまでがんばらにゃ。ほかに修理を頼めるところがないって誰もが言うけん。」
ご自身が制作を続けるとともに、技術を残していくことに対しても積極的に活動しておられ、定期的に制作教室を開催されています。
ただ、技術の習得は簡単なものではありません。
「ものづくりには辛抱が必要。やりたい気持ちだけではなかなか続かない」と、後継者育成への課題も感じておられます。
■喜んでもらうことが一番
「ものが仕上がったら嬉しいよ。やっぱり人に喜んでもらうことが一番大事だわね。」と中尾さんは話されます。
毎年作る干支を楽しみにされている方も多く、12年かけて十二支全て集めた方もいらっしゃるそうです。
「やめたいと思ったこと?そりゃなかったね。思ったものができちょーだ。」
◆作品展示のお知らせ
「仏像と版画展」
場所:平野勲記念館(出雲市大津町1797)
HP http://www.izumo-net.ne.jp/~isaohirano/
期間:平成30年2月3日(土)~4月15日(日)
開館は土・日・月曜日 午前10時~午後5時
入館料:中学生以上200円(小学生以下無料)
◆彫刻工芸 中尾
住所:島根県出雲市大津朝倉1丁目9-16
電話:0853-23-0666(自宅兼工房)