トキはかつて山奥の鳥と考えられていました。しかし、佐渡で放鳥してみると、山奥に作られたビオトープではなく、田んぼやその周辺で採餌し、人家近くに巣を作るなど、里の鳥だということがわかってきました。トキはドジョウなどの小魚や昆虫などを食べますが、捕まえるのは上手ではなく、くちばしを使って水中、泥の中を探ってエサを探します。また、水に浸して食べるという習性を持っている水辺の鳥です。
 水辺の鳥、とはいってもトキの足は15㎝ほどしかありません。ですのでサギのように深い川や湖に入って魚を採ることはできません。一面に水が張られているよりも、ところどころ水のたまったような場所を好んでエサを探します。まさに田んぼのような環境です。
 冬になり、田んぼに水がないと、田んぼの水生生物はいなくなってしまいます。水路でエサを探します。
 夏になり、田んぼに稲が茂ってくるとトキは稲の間に体を入れてはエサを探せなくなります。草地やあぜ道でミミズを探したりします。
 出雲市では、再びトキが出雲の空を舞う日を願いながら、トキをシンボルとした環境保全型(配慮型)農業を推進していこうと考えています。トキはもちろん、様々な鳥たちが生息できる環境づくりとして、エサとなる生き物(ドジョウや小魚、昆虫など)が少しでも戻ってくるように、農薬や除草剤、化学肥料などの使用を減らしたり、無くしたりする農業を推進したいと考えています。
 私たちの「食の安全」を守ることができ、環境にもやさしい、里山で様々な生き物と共存できる、そんな農業を推進するとともに、森林を守り、水産資源を守っていくことで、出雲の豊かな自然環境を次代を担う子どもたちへ残していきたいと考えています。