一字一石経塚

2000年3月、東林木町阿土谷町内の、園山家の裏山にあたる墓地を工事していた際に、

 「大乗妙典」と記された標石の下から、多量の河原石に文字が書かれたものが発見され

 ました。

 出雲市教育委員会の見解によりますと、これは「一石一字経塚」と呼ばれるもので、主として

 中世から近世にかけて行われた風習で、石に一字づつ経典を記し、祖先の追善供養とした

 ものとわかりました。

 出土地点は中世の山城跡として有名な鳶が巣城跡の麓にあたる地点で、出土地点の隣には

 延命地蔵を 祀った祠があり、西隣には「御魂さん」と呼ばれ、合戦の戦死者を供養したと

 伝えられる墓も存在しています。

 

園山家 

大乗妙典の標石

延命地蔵の祠

 

 

 

 

多量に出土した一字一石経塚

 埋葬されていた経塚の上面にあった標石は来待石で作られており、前面には「大乗妙典」の文字、側面には 「第四世 園山熊市 明治19年8月」と刻まれています。

 このことから、この標石が園山家の第四代園山熊市 さんが35歳のときに祖先の追善供養のために作られたものであることがいえます。

 一字一石経塚の発見は、この地域における仏教思想や歴史を考える上でも貴重な発見といえます。         

 発見された経石はおそらく数万個あると考えられ、5Cm前後のものが多く、そのほとんどに墨で文字が書かれていますが、中には全く文字が認められないものも若干混入していました。

 一字一石は、「南無阿弥陀仏」と書かれたものがほとんどを占め、もう片面に経文の一字を書いたものと思われますが、どの経典を書いたものかは不明です。

 なお 経石のほとんどは、元の状態に戻し祖先の供養をされており、「大乗妙典」の標石の下に 

 祀られておりますが、文字がわかる数十個の一字一石は、園山家に保存されています。