○出雲市地場中小企業・小規模企業振興基本条例
(平成29年出雲市条例第26号)
前文
神話の国・出雲は、肥沃な出雲平野と豊かな幸をもたらす海、湖、山々を有し、いにしえより経済活動が盛んに行われてきた地であり、出雲大社をはじめ荒神谷遺跡など今も数多く残る歴史的文化遺産が、神話とともに往時の繁栄をしのばせている。
平成の大合併により、古くから同じ文化・経済圏を形成してきた地域が一体となった出雲市は、農林水産業、商工業など各産業がバランス良く調和した県内第二位の人口規模のまちとして成長し、近年は、中国横断自動車道尾道松江線の全線開通や航空路線の拡充などにより、社会資本整備が一層強化されつつある。
こうした中、誘致された先端産業及び市内の大多数を占める地場中小企業・小規模企業が地域経済を支え、雇用や賑わいを創出し、市民生活の向上に寄与し、山陰の商工業の集積地として中心的な地域となっている。
しかし、近年、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、経済社会生活圏の広域化等により、地場中小企業・小規模企業の経営環境は厳しさを増している。
地場中小企業・小規模企業自らが経営の改善・向上に努めるだけでなく、地域社会全体で協働してその振興に取り組まなければ、地場中小企業・小規模企業、ひいては地域社会の衰退を招くことが危惧される。
このような認識の下、地場中小企業・小規模企業による技術革新と地域資源を活用した新たな分野への挑戦を地域社会全体で支援し、雇用の拡大と定住人口の維持を図るとともに、将来にわたり、地域に対する誇りを継承し、持続可能な地域社会を実現することを目指し、この条例を制定する。
(目的)
第1条
この条例は、持続的な地場中小企業・小規模企業の振興について基本事項を定めるとともに、市の責務等を明確にすることにより、地場中小企業・小規模企業に関する施策を総合的に推進し、もって地域経済の発展及び雇用の創出を図り、市民生活の向上に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条
この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1)
地場中小企業・小規模企業 中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第1項に規定する中小企業者及び同条第5項に規定する小規模企業者で、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。
(2)
中小企業・小規模企業支援団体 商工会議所、商工会その他の地場中小企業・小規模企業の支援を行う団体であって、市内に事務所又は事業所を有するもの及び市長が特に認めるものをいう。
(3)
大企業 地場中小企業・小規模企業以外の事業者で、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。
(4)
金融機関等 銀行、信用金庫その他の金融業を行う者及び信用保証協会をいう。
(5)
教育機関 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校その他職業に必要な能力を育成することを目的とする機関をいう。
(基本理念)
第3条
地場中小企業・小規模企業の振興における市、地場中小企業・小規模企業、中小企業・小規模企業支援団体、大企業、金融機関等及び教育機関並びに市民で共有する基本理念は、次の各号に掲げるものとする。
(1)
地場中小企業・小規模企業が地域経済の発展を支え、雇用の場を創出するとともに、市民生活の向上に寄与するものであることを認識し、その振興に協働して取り組むこと。
(2)
地場中小企業・小規模企業の自主的な経営の改善・向上の努力及び創意工夫を尊重すること。
(3)
本市の有する優れた産業基盤及び特色ある地域資源を十分に活用するとともに、豊かな自然環境に配慮すること。
(4)
優れた人材の育成及び雇用の確保を推進すること。
(5)
本市の貴重な歴史、伝統及び芸術文化を尊重すること。
(基本方針)
第4条
市は、次に掲げる基本方針に基づき、地場中小企業・小規模企業の振興に関する施策を講ずるものとする。
(1)
円滑な事業承継、創業及び新たな事業活動の推進を図ること。
(2)
経営の革新及び経営基盤の強化を図ること。
(3)
産学官連携等による地域資源を活用した新商品の開発並びに新技術の導入及び促進を図ること。
(4)
教育機関等と連携し、事業活動を担う人材の育成及び確保を図ること。
(5)
生きがいを持って働き、安心して子どもを産み育てることができる雇用環境の整備を推進すること。
(6)
農商工連携による6次産業化(1次産業としての農林漁業と、2次産業としての製造業、3次産業としての小売業等の事業との総合的かつ一体的な推進を図り、地域資源を活用した新たな付加価値を生み出すことをいう。)の推進及び新産業分野への参入企業の支援を行うこと。
(7)
中小企業・小規模企業支援団体と連携し、製品、サービス、技術等に関する情報発信を行うこと。
(市の責務)
第5条
市は、地場中小企業・小規模企業の振興に関する総合的な計画を策定し、施策を推進するものとする。
この場合において、市は、必要に応じて国、関係地方公共団体、地場中小企業・小規模企業、中小企業・小規模企業支援団体、大企業及び金融機関等(以下「関係機関」という。)並びに市民と協力して、効果的に実施するよう努めるものとする。
2
市は、工事の発注並びに物品及び役務の調達に当たっては、地場中小企業・小規模企業の受注機会の確保に努めるものとする。
(地場中小企業・小規模企業の役割)
第6条
地場中小企業・小規模企業は、基本理念に基づき、経済的及び社会的環境の変化に対応した経営基盤の強化、人材の育成及び雇用機会の確保並びに雇用環境の改善・向上に努めるものとする。
2
地場中小企業・小規模企業は、地域社会の一員として、地域活動に積極的に取り組み、自然環境との調和に配慮した活動を行うものとする。
3
地場中小企業・小規模企業は、市が実施する施策に協力するよう努めるものとする。
4
地場中小企業・小規模企業は、豊かな地域資源を活用し、地域で生産・製造・加工された産品を有効に活用するよう努めるものとする。
5
地場中小企業・小規模企業は、教育機関と連携し、児童・生徒の職場体験及び大学等のインターンシップの機会等を提供するよう努めるものとする。
(中小企業・小規模企業支援団体の役割)
第7条
中小企業・小規模企業支援団体は、基本理念に基づき、地場中小企業・小規模企業の実態を把握し、その経営の安定及び向上のために積極的かつ効果的な支援を行うとともに、市が実施する施策に協力するよう努めるものとする。
2
中小企業・小規模企業支援団体は、地場中小企業・小規模企業及び新たに地場中小企業・小規模企業になろうとする者に対し、適切な助言及び積極的な情報提供を行うよう努めるものとする。
(大企業の役割)
第8条
大企業は、地場中小企業・小規模企業とともに、地域社会の発展に極めて重要な役割を担っていることを認識し、市が実施する地場中小企業・小規模企業の振興施策に協力するよう努めるものとする。
(市民の理解と協力)
第9条
市民は、基本理念に基づき、地場中小企業・小規模企業の振興が地域経済の発展並びに市民生活の安定及び向上に寄与することを理解し、その振興に協力するよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第10条
市は、地場中小企業・小規模企業の振興に関する施策を実施するため、必要な財源の確保を図り、財政上及び税制上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(会議の設置等)
第11条
市は、地場中小企業・小規模企業の振興に関する施策を推進するに当たっては、関係機関その他市長が必要と認めるものの意見を十分に聴くものとする。
2
市は、地場中小企業・小規模企業の振興に関する施策の実施状況について、関係機関その他市長が必要と認めるものの意見を聴いた上で検証し、より効果的な施策の実施に努めるものとする。
3
市は、必要に応じて地場中小企業・小規模企業の振興に関する会議を開催し、前2項の意見を聴くとともに、施策を推進するに当たり必要な措置を講ずるものとする。
4
前項の会議の組織及び運営に関し必要な事項は、市長が別に定める。
(委任)
第12条
この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。