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出雲の伝統工芸紹介「出西織」
出雲市には、豊かな自然と歴史に育まれた多くの優れた伝統工芸があります。 作り手の方の想いとともに、出雲の工芸を紹介します。 |
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訪れた工房は、風が気持ちよく通る多々納さんの自宅に隣接した工房です。
ここで昭和30年に多々納桂子さんが出西織(しゅっさいおり)を始められ、
その後を継いだ多々納昌子さんにお話をうかがいました。
■三代引き継がれる伝統工芸
初代多々納桂子さんは、出西窯(しゅっさいがま)創業メンバーの一人多々納弘光さんの妻であり、
倉敷民藝館付属の「倉敷本染手織研究所」で1年間修行した後、出西の自宅に戻って出西織をはじめられました。
現在桂子さんは引退されており、息子の妻である昌子さんを中心に女性3人で製作されています。
昌子さんの娘さんも「就職活動の時に、自然と継ぐこと決めた」と、親子三代にわたって出西織は引き継がれています。
製品のほとんどは、紡績糸を藍染めし、手織りで作製されています。
創業当初は織りだけでしたが、現在帯や着物の生地など一部の製品は、綿を育て、手で紡ぎ、
染めて織るといった全ての工程を多々納工房で行っておられます。
「織るのは一瞬で、それまでにかかる手間や時間がほとんど。織りは集大成です。」と昌子さんは語られます。
畑で育てられた、茶綿と白綿。
綿花の畑も見せていただきました。
これが綿の実です。
■藍染の工程
・「藍建て(あいだて)」藍を染めに使えるような状態にすること。
原料(藍藻:あいすくも)に、工房で作った灰のアクを温め、少しずつアクを足しながら、発酵して菌を増やす環境を整えます。8日程度かかります。
・「染め」タテ糸・ヨコ糸を2週間程度かけて染めます。液体を糸に浸透させて絞り、空気に触れさせる工程を繰り返すことで、酸化と還元を繰り返します。
藍がめに浸した糸を引き上げて力強く絞ると、空気に触れた藍がさっと鮮やかな色に変ります。
■藍は生き物
「鮮やかさ、濃さ、色味など同じにはならないんですよ。
鮮やかさは藍によって違うので、自分で調整できるのは濃いか薄いかくらいですね。
発酵建て(はっこうだて)が一人でできるようになるには時間がかかります。
私自身も30年くらいやっていますが、まだわからないというか、生き物を飼っている感じなので、
やっぱり失敗しながら自分の身体で覚えていくしかないですね。年を取ってくるとだんだんわかりますけどね。
何歳になっても、発見することがありますね。それが面白いです。失敗をして、その原因はなんだったかと考え、これだったのかと。」
中庭の大きな木の枝に竿をつるし、糸をかけて乾かします。
納得のいく色になるまで液につけて乾かす作業を繰り返します。
美しく染め上がった糸。
「木綿は藍との相性が良いので、藍染に力を入れました。
木綿で藍の色を活かしたいと思っています。
藍は科学的なものが入らないので、畑に入れても、なめても、全然悪くない安全なものですから、仕事をしていても気が楽ですよ。」
■生活の中の身近なものに
「お家で使って、ちょっとほっとしてもらえるようなものが作れればなと思っています。
いい藍の色だなと思ってもらえるといいなと。
使っていただいた方が、また人にあげたくなるようなものができたら理想です。
『これが玄関にあると一日がんばろうと思える』という嬉しい感想をいただくことも励みになります。」
■藍の力を活かし、納得のいく色を追求したい
出西織の魅力は何ですか
―「毎日仕事として触れていても、藍の色は綺麗だなあと思います。
自分で染めていても感動します。これは私の力ではなくて、藍の力。毎日藍も表情が違います。
織りも、自分で作りながら、おお、きれいと思ったりしますから。
いい仕事ですね。困るのは、以前よりも色に厳しくなるというか。いい藍じゃないと気に入らなくなって、満足できなくなって(笑)
仕事としてはいいことなんですけどね。」
デザインはどこから生まれてきますか
-「デザインはしていません。倉敷の学校で教わってきた伝統的な「組織織り(そしきおり)」を引き継いでやっています。
紡績糸は均一ですが、洋服生地のような平織と違って、組織織はでこぼこして風合いの面白さ、模様の面白さが出るんですよ。」
今後の目標は
-「全ての工程を自分で行うこともできる面白い仕事です。
これからもどんどん勉強して技術を持ち、納得のいく藍の色を追求していきたいです。」
◆出西織 多々納工房
島根県出雲市斐川町出西3655
電話:0853-72-3120
フェイスブックhttp://www.facebook.com/shussaiori
◆出西織の製品は下記の場所で購入できます
・出西織工房(事前連絡要)
・出西窯
・出雲民藝館
・道の駅湯の川
・一畑百貨店(松江、出雲空港売店)