1.松くい虫とは?

その原因  「松くい虫」、「松枯れ」などと呼ばれるマツの枯れは、松の伝染病です。その病原はマツノザイセンチュウで、その媒介者はマツノマダラカミキリです。

マツノゼイセンチュウは線虫の一種です。線形の長さ1mm足らずの、肉眼では判別できない微生物です。 マツノゼイセンチュウは線虫の一種です。線形の長さ1mm足らずの、肉眼では判別できない微生物です。

マツノマダラカミキリ 1 マツノマダラカミキリ 2
マツノマダラカミキリはカミキリムシの一種です。虫の体調はふつう20~25mm、暗赤褐色で白いまだらがあります。触角の長さが、雌は体の1.5倍、雄は2~2.5倍と雄が長いのが特徴です。 マツノマダラカミキリ 3

マツノザイセンチュウはマツノマダラカミキリの成虫によって、枯れたマツから健全なマツに運ばれ、これを枯らすのです。

その症状 「松くい虫」に侵されたマツは、つぎのような枯れ方をします。
  1. 8~10月に枯れ始めます。少数は11月以降、時に年を越してから枯れはじめることもあります。「枯れ」は葉の変色によってわかります。8~10月に枯れ始めた場合は葉は急に赤褐色になりますが、11月以降に枯れ始めた場合はだんだんと黄褐色になります。どちらの場合も最後には枯れ葉は落ちてしまいます。
  2. 木全体が枯れます。枯れの進み方は、木の先端から下へ、下枝から上へ、また木全体が一度に―と一定ではありません。
  3. 幹を傷つけたり枝を折ったりしても、その傷口からはやにがまったく出ません。これは「松くい虫」を診断するとき、確認しなければならないポイントです。築地松はほかにいろいろな病気や虫に侵されることがありますので、これらとは区別しましょう。
夏~秋の枯れ 晩秋~春の枯れ
夏~秋の枯れ 晩秋~春の枯れ

その伝染 松の枯れをめぐるマツノザイセンチュウ(線虫)とマツノマダラカミキリ(カミキリ)の動き

ここに「松くい虫」によって枯れたマツの木があるとしましょう。その材には病原であるマツノザイセンチュウ(線虫)と媒介者であるマツノマダラカミキリ(カミキリ)が生息しています。
松くい虫の伝染
A カミキリの成虫は5月下旬~7月中旬、この枯れたマツの木から出ていきます。6月のうちにこの脱出のピークがあります。このとき、カミキリは体の中に線虫を詰めています。この数は1頭のカミキリあたり1万以上のことも珍しくありません。
B このカミキリは元気なマツの細い枝に飛んでいきます。そこでこの枝の皮を食べます―これを「後食(こうしょく)」といいます。このとき、線虫はカミキリの体から出て、カミキリがかじった枝の傷からマツの中に入っていきます。
C 線虫はマツを侵して、マツは弱り、8~9月から枯れが目立ってきます。
D こうして弱り、また枯れたマツの幹や枝の皮に、7~8月、カミキリは産卵します。
E 卵は1週間もすればふ化します。そして8~10月、幼虫ははじめマツの内皮を、ついで材の表面を食べて成長します。一方、線虫は材の中で交尾・産卵を重ねて増えていきます。
F 幼虫は材に細い穴を掘り、11月になるとその穴に木屑を詰めて、穴の行き止まりに潜んで冬を越します。年を越して2月を過ぎると、線虫はカミキリの幼虫のまわりの材に集まります。
G 5~6月に幼虫はさなぎになります。
H さなぎはその15~30日後には成虫になります。このとき、線虫はカミキリの体に移り、その体内に入ります。
そしてまた、5月下旬~7月中旬、カミキリの成虫はこの枯れたマツから出て行くのです。体の中には線虫を詰めて…。

このように、カミキリは1年に1世代を経ます。これに伴って、線虫はマツの木に運ばれてこれを枯らします。そしてその材のなかでカミキリに近づき、これにとりつきます。すなわち、伝染の鎖は1年に1回転します。

Q&A ひとこと「松くい虫」の被害はずっと昔からあったのですか?
もしそうなら、きっと古文書にもその惨状が記されているに違いありません。マツは古くから日本の文化を支えてきた木であり、その枯れはだれにでもよく分かり、また激しく広がるのですから。しかし、それを見つけることはできません。この被害が最初にはっきり記録されたのは、明治38・39年、長崎市での被害についてです。おそらく、病原であるマツノザイセンチュウは、その当時外国から持ち込まれたものと思われます。実は、この線虫はアメリカには古くからいることが分かっています。その後、枯れた木が人手によって運ばれて、各地に被害が行き渡ったのでしょう。
ふたことでは、なぜ近頃その被害が急に激しくなったのですか?
昭和30年代までは、マツ山は材木の生産と同時に燃料の採集林でした。枯木、枯枝、落葉は、大切な燃料でしたね。ですから、「松くい虫」による枯木は喜んで切られ、線虫、カミキリもろとも灰になったのです。それは、「防除」と言わないまでも、徹底した防除だったのです。ところが、マツが枯れてもだれも好んでそれを切ろうとはしない時代が来ました。まき、木炭、石炭から石油への燃料革命。こうして、「松くい虫」の被害は昭和40年代後半から激しくなったのです。ですから、この被害は一種の「社会病」とも言えましょう。
みことどんな時に、この被害が激しく起こるのですか?
まず、前の年に枯れた木が周りに沢山あるほど、被害は激しいでしょう。この被害は伝染病ですからね。しかし同じ数の枯木があっても、気象によって被害程度は変わります。夏、雨が少なく気温が高いと、「松くい虫」は激しく起こります。このような夏には、カミキリの成虫の線虫を伝搬する行動が活発になるからです。また、この病気自体が、発生しやすくなるからです。


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